製品開発の方針

製品開発の方針

学習者の夢をかなえる製品作り

CASIOの製品開発の理念は、「0→1」(無から有を生み出す)であり、人々の潜在的なニーズを発見し、これまで世の中に存在しなかった新しい商品や価値を開発することで、社会の発展に貢献することです。特に教育分野では、先生や生徒のニーズをしっかりと把握することが重要だと考えています。

そこで、CASIOのエンジニアが学校を訪問したり、実際に授業を受けたりして、先生や生徒がどんなことに困っているのか、何を求めているのかを精査することで、ニーズを肌で感じ取ります。

そこから生まれた新しい製品のアイデアは、教育関係者の協力を得て、そのフィードバックを受けながら改良していきます。開発プロセスそのものにも時間をかけますが、早い段階で専門家の方々に評価していただくことで、"学びをサポートする"本物の教育機器となるのです。それがCASIOの目指すところです。

また、各国のカリキュラムに最適化した製品を提供することも目指しています。現地の教育機関と協力してカリキュラムを検証し、機器に必要な仕様や機能を検討しています。そうして、各国ごとに仕様が異なるローカライズ製品モデルを展開します。

私たちが教育分野の 「0→1」開発で重視しているのは、教育関係者や教育機関の貴重なご意見に耳を傾けることです。このプロセスを忠実に守ることが、私たちの最も重要なポリシーです。

私たちの教育機器やGAKUHANの活動が、「学習者(子どもたちなど)の夢をかなえる」ことにつながると信じています。皆様のご意見は、CASIOの教育機器の次の新製品に反映させていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

"ClassWiz"モデルの開発

―世界初の高解像度関数電卓の開発の実話―
上嶋宏、ClassWizの開発担当者

関数電卓との出会い

あれは私が1999年に大学に入学したばかりの時でした。入学早々、大学生協で教科書販売会が開催され、新入生は教養課程の必修科目の教科書類をすべて購入しなければなりませんでした。その中に「CASIO fx-3600P」があったのです。初めて手に取ってみた時の第一印象は、「ハイテクなガジェットだな」程度でしたが、ともかくそれは自分が理数系の学生になったことを実感させてくれました。しかし、残念ながら、当時の私は「関数電卓」についての知識が浅く、sin/cos/tanの計算ぐらいしかできないものだと思い込んでいました。結局、学生時代はごく限られた機能しか使いませんでした。今思えば、fx-3600Pをもっと使いこなすことができていれば、勉強や試験に役立っていたことでしょう。

誰にも愛されていなかった関数電卓

大学卒業後にCASIOに入社し、関数電卓の開発者となりました。当時「なぜ関数電卓は使いにくいのだろう?」と真剣に考えていたところ、日本の高校生の嫌いな教科の第1位が数学、第2位が英語という極めて重大な事実を知る機会がありました(KANKO調査、2007年より)。関数電卓のディスプレイには、英語の「略語」で計算機能が表現されています。生徒の多くは、ただでさえ数学が苦手で嫌いなのに、関数電卓を使いこなすには、英語まで理解しなければならないのです。言ってみれば、嫌いな科目のワースト1位とワースト2位のダブルパンチです。「一番嫌いな教科である数学」が「二番目に嫌いな教科である英語」の「略語」で表現されているのですから、自分が一生懸命開発してきた製品は、生徒たちにとって嫌いな要素が最悪の形で詰まったものなのだと気づきました。これがClassWizを開発しようと思ったきっかけとなりました。

ユーザーから愛される関数電卓を開発するために

私が開発している製品が「ユーザーにとって嫌いなものの塊」であることに気づいたとき、非常に強いショックを受けました。 ユーザーから愛される機器を開発したいという強い想いがあったからです。そのため、新しいLSIを用いた高解像度のディスプレイを備えた関数電卓を開発するプロジェクトが社内で発足したとき、私はすぐにそれに参加することを決めました。
開発のポイントは、計算機能を略語ではなく、フルテキストやアイコンで表現することでした。「一番嫌いな教科である数学」そのものを関数電卓から取り除くことは諦めましたが、少なくとも、新製品からは嫌いな要素を「2つ」から「1つ」に減らしたかったのです。 また、ClassWizには、「ライン入力モード」など、既存の製品のヘビーユーザー向けの多くの使いやすい機能があります。
これらの機能のおかげで、ClassWizは、高校や大学の新入生、または企業の新入社員など、初めて関数電卓を使用する人たちの心理的ハードルを下げることができました。 今となっては関数電卓市場において世界第3位の売上となるClassWizのラインナップを展開できたことを誇りに思っています。

使いやすさの追求

分数入力キーのデザインは、空の四角の上に白い四角があり、その間にバーがあるというものです。白い四角は、ディスプレイに最初に表示されるカーソルの位置を示しています。これは、分数を入力するキーの機能を直感的に理解するのに適しています。このデザインは、最初の「数学自然表示」の関数電卓を作ったときに採用し、現在も使い続けています。
キーの色数は3色、本体の文字は5色です。キーの機能は、色分けされています。 競合他社の電卓よりも多くの色を採用しました。このように多くの機能を細かく表現することは、デザイン性を損なう可能性がありましたが、開発部門とデザインチームで、機能性とデザイン性の両方を満足させるために何度も議論しました。
新しいClassWizは素晴らしい製品となりました。電卓から始まったCASIOの歴史の中で、ClassWizは正に最新の成果であると言えます。

Video

Part.1 歴史と進化

Part.2 品質を高める

Part.3 未来を計算する